ビフテキのカワムラ

神戸牛・神戸ビーフについて

神戸ビーフの定義

神戸牛は存在しない!?

唐突なタイトルで驚かれたかも知れません。 実は日本中を探しても、兵庫県内の牧場を探し回っても、神戸市内の牧場を探し回っても「神戸牛」と名の付いた牛は存在しません。
ではなぜ店頭には神戸牛と呼ばれる肉が存在するのでしょうか?

実は、「神戸牛」とは、松坂牛・近江牛等のブランド牛にあわせて呼ばれている俗称であり、本当の名称は「神戸ビーフ」 あるいは「神戸肉」と呼ばれます。また、神戸で生まれ育った牛を「神戸ビーフ」と呼ぶわけでもありません。神戸市内にはごく少数の牧場が存在いたしますが、その敷地内で飼育されている牛が大きくなったら「神戸ビーフ」になるというものでもありません。

実は、「神戸ビーフ」「神戸肉」には生産者・食肉流通業界・消費者の協力のもと設立された「神戸肉流通推進協議会」という団体があり、この協議会が定める厳しい定義をクリアしたものだけに、最高級牛肉「神戸ビーフ」「神戸肉」の称号が与えられているのです。

ですので、生まれた時から「神戸牛」の名前が付いた牛は存在しませんし、神戸で大きくなったから「神戸牛」という訳ではないのです。神戸牛とは「神戸ビーフ」「神戸肉」の俗称であると、覚えておいてくださいね。ちょっとしたトリビアです。

画像:神戸牛は存在しない!? 新聞

神戸ビーフの由来

「神戸牛は存在しない!?」でご説明した神戸ビーフ。 実はその歴史は古く、江戸時代が終わりを告げ、明治時代へ突入して行く頃までさかのぼります。

「神戸肉流通推進協議会」公式ホームページによると、今から140年ほど前の慶応3年12月7日(1868年1月1日)に、神戸がわが国ではじめての貿易港となり、その開港の式があげられました。 当時、外国人が神戸で牛肉を食べ、その味のよさを知られて以来「神戸ビーフ」として重宝がられ、その名は国際的なものとなり、日本に来る楽しみは「風光明媚な土地を見ることと、神戸ビーフを食べることである。」と言われたそうです。

やがて、神戸の美味しい牛肉は「神戸ビーフ」として紹介されるようになり、国際的なブランドとして定着していったのです。

もう少し踏み込んで慶応3年の出来事をしらべて見ると、大政奉還が行われた年になる様です。まさに、江戸時代から明治時代に変わる激動の時代に「神戸ビーフ」は産声をあげたんですね。幕末、明治維新で活躍した名士達も、神戸ビーフを食べたのでしょうか?

参考資料

大政奉還(たいせいほうかん)とは、江戸時代末期の1867年11月9日慶応3年旧暦10月14日に、江戸幕府 第十五代征夷大将軍 徳川慶喜が、大政(統治権)の朝廷天皇)に対する返上を申し出た政治的事件である。(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より引用)

神戸ビーフの定義

神戸ビーフは神戸で育ったから「神戸牛」では無いことはご理解いただけたと思います。では神戸ビーフとはどのようなものなのでしょうか?

但馬牛について

「但馬牛は、古来より但馬地方で飼われており、続日本紀では「耕運、輓運、食用に適する」と記されている。
江戸時代以前は、主に田畑を耕したり、輸送の役牛として用いられていた。長命連産で繁殖力が強いため、但馬では生産がさかんに行われており、養父市場(現・養父市)などに牛市が立ち、畿内やその周辺へと取引されていた。小型で力強く、飼料の利用性がよい但馬牛は人気が高かったようである。

明治時代に牛肉を食べる文化が広まると、神戸ビーフとして注目されるようになった。 神戸ビーフの名は、神戸の居留地に住む外国人たちが神戸で手に入れた牛が非常においしかったからとも、横浜などの居留地の外国人たちが生産量の多い関西方面から入手した牛が神戸を経由していたためとも言われているが、いずれの場合も但馬牛とされる。

明治時代には、品種改良のために、イギリス原産の短角種デボン種、スイス原産のブラウンスイス種などの外国種との雑種生産が行われたが、肉質悪化、使役能力の低下などの見られるようになったため、雑種交配は短期間で中止された。
1898年(明治31年)には戸籍にあたる牛籍簿で血統の管理が行われるようになり、1911年(明治44年)以降は外国種の血液の入った牛が排除された。 また、他地域の品種との交配も行わず、血統の純化、改良が進められ、蔓(つる)と呼ばれる系統がつくられている。あつた蔓、ふき蔓、よし蔓の3つの代表的な蔓牛がある。

但馬牛は、資質、肉質が良いため、神戸ビーフ、松阪牛、伊賀牛、近江牛、飛騨牛などの銘柄牛の素牛となっている。また、前沢牛などのように、但馬牛の血統を入れることで牛の品種改良が行われていることも多い。 」

(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より引用)

神戸ビーフ・神戸肉の素牛(もとうし)は但馬牛です。神戸ビーフは松阪牛、伊賀牛、近江牛、飛騨牛などと元は同じ但馬牛だということになりますね。

図:神戸ビーフの定義01

この但馬牛のなかで、

  1. 霜降りの割合である「BMS」が6以上の肉質のもの
  2. 赤身の割合(歩留等級)がA・B等級
  3. 枝肉重量が450kg以下である

を神戸ビーフと定義されています。
つまり、神戸ビーフとは、その最高級の但馬牛の中から更に厳しい諸条件に合格した牛だけが 「神戸ビーフ」と呼ばれるのです。選りすぐりなだけに、その絶対数が少ないことがわかりますよね。

下の表は、BMS(ビーフ・マーブリング・スタンダード)とよばれてます。全国でこれを基準に牛肉は格付けされ、 ロースの芯の霜降りの度合いによって牛の格が決まります。これは霜降り度だけ表しており、実際に食べておいしいのはこれ以上に肉質や脂の質などが関係しています。

ちなみに神戸ビーフとよばれるには、 BMSの値が6~12(上図の黄色枠線部分)になります。但馬牛の血統であり、BMS値が6縲鰀12での肉質で兵庫県内で飼育された牛に限って「神戸ビーフ」の証がもらえます。

図:神戸ビーフの定義02